椅子から去った王子2

椅子から去った王子

※これは映画「ニュー・シネマ・パラダイス」中の挿入話にヒントを得て書いたお話です

by Yumi (2019)

前回までのお話はこちらから → 椅子から去った王子

イラスト by Hikaru 🐰

あらすじ

ある国にとても美しい王女がいて、窓の下の椅子に100日間すわることが出来た者と結婚すると言いました。たくさんの王子が挑戦したけれど、まだ誰も成功していません。結構きついことだったのです。

2 

白鳥の王子

そんなこんなで、挑戦する王子や騎士たちはめっきり少なくなりました。

けれども、王女の美しさを聞きつけて、また、ひとり、王子がやって来ました。

白鳥の羽をぼうしにつけた、まだひげも生えそろわない、とても若い王子です。

王子は窓辺にすわる王女を一目見るなり、すっかり、恋をしてしまいました。

お城に入った白鳥の王子は、王様にうやうやしく一礼してから言いました。

「どうか、王女様と結婚させてください!」

(なんじゃ、まだ子供ではないか! ひ弱そうじゃの)

 王様は若い王子をじろっと見て思いましたが、

(仕方がない。やらせてみるか)

と、かたわらの王女に目配せしました。

 王女はうなずいて、機械じかけのように、いつもの言葉を述べました。

「私の窓の下に、100日の間、すわり通すことができたら、喜んであなたの妻になりましょう」

「はい、必ず」

 王子はきりりと答えました。

 こうして、白鳥の王子は椅子にすわり始めました。

 きらきらした大きな目はいつも王女の窓を見上げていました。

 どんなに疲れていても、その窓辺に王女がすがたが見えれば、心はおどり、また勇気がわいてきました。

 実際、王子はとてもがんばったのです! 

 50日が過ぎ、60日が過ぎ、65日になっても、王子は椅子にすわっていました。

これは新記録でした!

 でも、70日目になって、朝からひどい暑さの中をすわり続けていた王子は、夕方、椅子から転げ落ちてしまいました。

「ああ、王子様!」

心配しながら見守っていた家来たちがかけよった時には、王子は息絶えていました。

「何じゃ、期待させおって。見た目通りのふがいないやつめ」

気の毒に思うどころか、王様はすっかり腹を立てて、

「さっさとなきがらを運び出せ」

と、なげき悲しんでいる家来たちをどなりつけました。

そして、自分の家来たちには、

「このことを決して王女の耳に入れてはならぬぞ」

と、きつく命じたのでした。

次回へつづく

※これは2019年に絵本・童話の創作Online「新作の嵐」」に掲載されたものを若干修正したものです。

「新作の嵐」へはこちらから→https://shinsakunoarashi.com/%e3%81%84%e3%81%99%e3%81%8b%e3%82%89%e5%8e%bb%e3%81%a3%e3%81%9f%e7%8e%8b%e5%ad%901-7/

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