文 Yumi 絵 Hikaru
今年もクリスマスが近づいてきました。
ようせいサミュエルは、そう庫をそうじしています。
サミュエルは、今年が初めてのそう庫係です。
「もうすぐ工場から、今年の分のクリスマスプレゼントが、どっさり、とどくぞ。その前に、ちゃんと、おそうじ、しておかなくちゃ」
まだ空っぽのそう庫を、そうじしていたサミュエルは、しんぞうが止まるほど、びっくりしました。
「わあ、たいへんだ。去年のプレゼントが、1っこ、あまっている！」
そう庫のすみに落ちていたのは、少しふくらんだ、白いふうとうでした。
あて名には「サンタ様」と書いてあります。
「ということは、これ、サンタ様あての、おねがいの手紙だ！」
子どものおねがいをすっぽかしたとしたら、ＳＣＰＴ（サンタ・クリスマス・プレゼント・チーム）のたいへんなしっぱいです。
「サンタ様にお知らせしなくちゃ！」
サミュエルは、まっ青になって、サンタの所へとんで行きました。
「これが、そう庫このすみに、落ちていました！」
「まあ、落ち着きなさい、サミュエル」
サンタは、休んでいたいすから、ゆったりと、体を起こしました。
そして、サミュエルからふうとうを受け取ると、長いひげをなでながら、しげしげと、ながめました。
「ふむふむ、なるほど。心配することはないぞ、サミュエル。これは期日指定のプレゼントじゃ」
「え、期日指定？」
「そうじゃ。ほれ、ここを見てごらん」
サンタは、ふうとうのはしっこを、指さしました。
そこには、うすい、えんぴつ書きがありました。
「期日指定－90年後のクリスマスに、配達のこと」
「『ねがいごと受付係』のメモじゃよ。今年になったら、うまいこと、そう庫にあらわれるよう、ふうとうに、まじないをかけておいたのじゃろうな」
「へえ、そうだったんですか。ということは、今年が、その90年後のクリスマスってことですね？」
サンタはうなずきまいた。そして、ふうとうを開き、中から手紙を取り出して、声に出して読み始めました。
「サンタさんへ
この間、ぼくたちは、学校のじゅ業で、
『90年後の、自分への手紙』というのを、書かされました。
せっかく書いたので、99才のおじいさんになったぼくに、とどけてください。
そして、ぼくの代わりに、ねがい事を聞いて上げて下さい。
よろしくおねがいします。
たいち」
読み終わると、サンタは白いふうとうの中から、べつのふうとうを取り出しました。
クリスマスもようの、赤いふうとうです。
あて名には、「99才のたいち様」と、書いてありました。
「あははは」
サミュエルは、ぴょんと、ちゅう返りをしました。
「こりゃ、面白いや。たいちくん、おじいさんになった自分に、何て書いたんだろうな？」
「そりゃ、読んでのお楽しみじゃよ、サミュエル」
サンタの目も、ゆかいそうに、わらっています。
「でも、サンタ様。90年もたっているから、住所をさがすは、ちょっと、やっかいではありませんか？」
「いやいや、サミュエル。子どものねがいは、かならず、かなえてやらねばならぬ。
わしは、きっと、この手紙をとどけてやるつもりじゃよ」
サンタは赤いふうとうを、やさしく、なでさすりました。
「あ、サンタさん！」
今夜はクリスマスイブ。
たいちおじいさんの家では、家族がみんなが集まって、ごちそうを食べたところです。
「明日はいよいよクリスマス。
そして、おじいちゃんの、99才のおたんじょう日よ。ちょっと早いけど、ケーキにしましょう」
ママが、まっ白なケーキを、持って来ました。
99本のろうそくが、明るく、かがやいています。
「ハッピー・バースディ、 おじいちゃん！」
「ありがとう、ありがとうよ、みんな」
たいちさんは、うれしそうに、ひとりひとりに、うなずきました。
あたたかいお茶と、あまいケーキ。
だれもが、ほんとに、幸せです。
その様子を、目を細めて、ながめていたたいちさんは、いつの間にか、ねむってしまいました。
気がつくと、真夜中になっていました。
たいちさんの上には、あたたかなもうふが、かけてありました。
家の中は、しんと、しずまり返っています。
ふと見ると、ツリーのそばに、サンタクロースが、立っていました。
「おや、サンタさん。こんばんは。ずいぶんと、おひさしぶりですね」
「こんばんは、たいち」
と、サンタも、あいさつしました。
「わしは、毎年、来ていたよ。おまえさんは、見えなかっただけじゃ」
「ええ。サンタは、子どもにしか見えないのが、決まりですからね。
それなのに、今年、わたしにもサンタさんが見えるのは、いったい、どういったわけですか？」
たいちさんが聞くと、サンタはいいました。
「いやな。おまえさんに、期日指定のプレゼントがあるからじゃよ」
「期日指定のですって？ だれから？」
「9才のおまえさんからじゃ」
サンタは白いふうとうを、たいちさんにわたしました。
たいちさんは、中の手紙を読んで、わらい出しました。
「こんな手紙、書いたことを、すっかり、わすれていましたよ。
そして、こっちの赤いふうとうには、何を入れたんだっけ？
まるで、思い出せないなあ」
「わしも楽しみに、今夜まで、がまんしておったのじゃ。早く、開いてみなされ」
たいちさんは、赤いふうとうを開いてみました。
すると、中から、おり紙で作った金メダルと、2通の手紙が、出て来ました。
1通目の手紙には、こう、書いてありました。
99才のたいち様へ
今から 10のしつもんをします。
答えが、8点いじょうだったら、金メダルです。
サンタさんから、ごほうびを、もらってください。
9才のたいちより
そして、2通目に、こんなしつもんが、書いてありました。
「１ ちこくを、あまり、しませんでしたか？
２ 宿題を、あまり、わすれませんでしたか？
３ 一りんしゃに、乗れるようになりましたか？
４ 息つぎが、出来るようになりましたか？
５ きゅう食を、わりと全部、食べれましたか？
６ おうちの手つだいとかを、ときどき、しましたか？
7 友だちが、いっぱい、できましたか？
8 いっぱい、人を、すきになりましたか？
9 いっぱい、人に、すきになられましたか？
10 よい人生でしたか？」
たいちさんは、なみだが出るほど、わらってから、
「わたしは、まちがいなく、金メダルですよ」
と言って、おり紙の金メダルを、首からかけました。
「では、わしからのごほうびを、上げるとしよう」
サンタも、わらいながら、たいちさんにたずねます。
「おまえさんが、今、一番ほしいものは何だね？」
たいちさんは考えて、
「一度、あなたのそりに乗ってみたいです」
と、答えました。
サンタはうなずいて、ポケットから、小さい、赤いぼうしを取り出しました。
ようせいサミュエルがかぶっていたのと、よくにたぼうしです。
サンタが、それをたいちさんの頭におくと、たいちさんは、9才の男の子になりました。
「これで、おまえさんは、今夜、わしの助手じゃよ」
ぷわんと、けむりが立ちました。
目を開けると、たいちさんは、サンタのそりの上にいました。
「そうれ、いけ、トナカイたち！」
サンタの声で、そりは空高く、走り始めました。
こうして、その夜、たいちさんは、サンタのプレゼント配りを手つだって、大いそがしでした。
夜が明けて、たいちさんは、ツリーの下で、目をさましました。
ママがおどろいて、のぞきこんでいます。
「わあ、あきれた、おじいちゃん！ こんな所で、夜を明かしたの！」
たいちさんは、ごきげんで、ママにいいました。
「いやあ、すばらしい夜だったよ。
わたしは、サンタのそりにのって、プレゼント配りを、手つだったんだ」
「それはよかったわね！」
ママもうれしそうです。
「もうじき、夜が明けるって時に、わたしは、思い切って、サンタにたのんでみたんだ。
『ついでに、このまま、神様の所まで、送りとどけてくれませんか？』
って」
「ええっ！ おじいちゃんたら、そんなことを！」
ママは、目をまん丸くしました。
「それで、サンタさん、何ておっしゃったの？」
たいちさんは、ふふふっと、わらいました。
サンタは、こう、答えたんだそうです。
「たいちよ、ずるしてはいかんよ。おまえのじゅん番は、まだまだ先じゃ。
このまま神様の所へ行って、
『ずるはしなかったか？』
と聞かれたら、いったい、おまえさん、どうこたえるつもりじゃね？」
🌟 🎄 🌟 🎄 🌟 🎄
今年も、もうじき、クリスマス。
サンタは、子どもにしか見えない決まり。
だから、子どもの心で耳をすませば、きっと、聞こえて来るはずです。
遠い空をかけて来るジングルベルと、ゆかいなわらい声が。
Merry Christmas!!
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