『指輪物語』への愛💗
ガンダルフ(5)
そもガンダルフとは?
太陽の焔を操り、上古の怪物バルログと渡り合い、エルフや人間に頼りにされ時に恐れられ、悪党どもを名剣グラムドリングで滅多切り。
強いガンダルフ!
歴戦の将ガンダルフ!
大魔法使いガンダルフ!!
けれども、彼の魅力はそこだけにあるのではありません。
時に彼の見せる優しさや親しみやすさに私たちは惹かれます。
旧知の仲であるビルボやフロドと並んで座り、パイプの煙で輪っか作り競争をする姿は物語にも映画にも登場します。
知りたがりが昂じてトラブルに陥ったピピンを自分のマントにくるんで馬に乗せ200リーグを行く間、太古の物語を歌い聞かせたことは前回に書いた通り。
P.ジャクソン監督による映画「ロード・オブ・ザ・リング 第3部 王の帰還」のクライマックス近く、剣を手に最後の激戦を待つピピンがガンダルフに死への不安を語るシーンがあります。
ガンダルフはこの上なく親切な目でピピンを見やり、語ります…。
「…しばし闇が落ちる。再び目を開くと静かに雨が降っている。その雨が上がると、向こうに美しい緑の島が見えて来る…。どうだね、悪くあるまい?」
「ええ、悪くないですね」
このシーンは原作にはないのですが、ガンダルフの言葉を通してトールキンの死生観がよく表現されています。
ゴラム(日本語訳ではゴクリ)こと、スメアゴルはもともとホビットの一族。
一時期、魔王サウロンの指輪を隠し持っていた彼はやがて指輪に毒され、怪物となり果て、失った指輪を求めて現所有者のフロドを追い回します。
旅の道中、ゴラムにつきまとわれるフロドは「ガンダルフが殺してくれていたら」と恨みます、かつてガンダルフにはその機会があったのにと。
嘘と悪意の塊であり、屍肉をあさるこのみじめで危険な生き物をガンダルフはなぜ生きながらえさせたのか?
ガンダルフはゴラムの真っ黒に閉じた心の片すみにあるかすかな「よくなる望み」を見捨てませんでした。
同時に、サウロンさえも「予測しない役割を果たす可能性」を彼の中に見て取ったのです。
実際、もしもガンダルフがゴラムを「無用なもの」と即断し切り捨てていたら、サウロンの恐るべき指輪を破壊するというフロドの使命は達成できず、物語は悪の大勝利に終わっていたでしょう。
同じく神々に遣わされながら、尊大にして野心のために悪に堕して行ったサルーマンとの違いはどこにあったのか?
上古にガンダルフはオローリンと呼ばれ、神々に仕えていたことは前に述べました。
オローリンの時、彼はしばしばニエンナという女神を訪れています(『シルマリルの物語』)
この女神は悲しみを熟知し、他の憂いを知らず輝かしく喜ばしい創造の神々から距離を置いて、「死者の館」近く、世界の縁に住んでいます。
そして、彼女が悲しみ嘆く声を聞けば、だれもが「憐憫と望みをもって耐えることを学ぶ」と言います。
ガンダルフはこの女神から「慈悲と忍耐」を…、
容易に悪に染まる、弱くて情けない、ちっぽけな存在の悲しみに寄り添い、これを見守り、見捨てず、可能性を信じてじっと待つことを学んでいたのです。
物語の最後、灰色港から上位エルフの最後の船が彼岸に向かって出航する時、ガンダルフの指に初めてルビーの指輪が光ります。
彼こそは偉大な3つのエルフの指輪の一つ「赤い火の指輪」ナルヤの持ち主だった!
ホビットの間に灰色マント、杖、三角帽というぱっとしないスタイルで初登場した魔法使いがついに稀有な正体を明かした瞬間であり、指輪闘争を通してガンダルフが担っていた真の重荷が何だったのかを読者が知る瞬間です。
ガンダルフとは宇宙を包むほどの知恵とパワーを持ちながら最小の、時に最悪の存在にも心を置く大慈悲のお方だった…。
ここは合掌するところかもしれませんね(笑)
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